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映画 彼女が消えた浜辺 [映画]

気がつけば非英語系外国語シリーズ
今日はイラン
またイラン?

予告編のあおりが見事だったので
鑑賞決定

その予告編でわかるあらすじ
離婚したばかりの男友達のために
旅行のついでに
みんなで紹介した女性が消えて
いろいろ明らかになっちゃう
とか?

彼女が消えた浜辺

当然のように公開館は少ないので
当然のようにほぼ満席
携帯をパカパカするような客も見あたらないのは
ここが渋谷でも池袋でもないから?
映画の性質のせい?

のっけから
4つくらいの家族が入り乱れて
見分けのつかないイラン美人達と
男女の区別もしづらいイランの名前達を前に
絶望的な気分になったものの
ただただ繰り広げられる
アナログ感まるだしのレクリエーションのおかげで
なんとか誰が誰なのかわかります
ありがたい


序盤からずっと気になる
どこかにひずみを感じる空気

結構な大人数が一緒にいたら
どんなに仲が良さそうに見えても必ず生じる不協和音と
よかれとおもってやる行動が
思いも寄らない悲劇を生み出す展開が
ずっともじもじするような居心地の悪さを放出し続けて
なんのカタルシスも与えられないまま
終わっちゃうので
いやがらせ映画としては最上級です

こりゃ嫌だ
つまりは最高です
素晴らしい

所々演出がしつこいけれど
こういういたたまれない系の映画監督は
ひたすら続けることで生まれる
もういいよ感が大好きなんだろうな

ということで
全然ジャンルも流れも違うものの
SRサイタマノラッパーの嫌な場面での空気感が好きな人に
お勧めです

お勧め対象絞りすぎ

普通の人の揺れ動く感情と保身と愛情と憎しみが
くるくる入れ替わる感じとかたまりません
ありふれているけど当事者にとってはもちろん特別な惨事の横には
きっとこういうドラマがいくつも生まれるんだろう

とか
ぐだぐだ面倒な感じのネタバレ込みの感想は以下

予告編がうまいこと謎に仕上げた部分も含めて
オチまでネタバレするので注意

あらすじ含めるので長いです

P1000166.jpg



車でとばして奇声をあげてはしゃぐイラン人の男女

という絵面がすでにかなり新鮮です
「ペルシャ猫を誰も知らない」でも盛り上がるイラン人は出てたけど
あれはアンダーグラウンドな世界なんだろうし

異様にはしゃいでいる彼らは
どうやら旅行をしているようですが
序盤ではそもそも全部で何人いるのかわかりません
男はともかく女性は美人のパターンが結構似てて
みんな顔しか出してないので髪型で見分けることもできず
いきなりハードルがかなり高いです

それでも必死に会話を追っていくと
いくつかの家族による旅行で
ドイツ在住の友人(アーマド:男性)が最近離婚して
女性を紹介する目的があるということみたいで

この大きなお世話感が序盤のいたたまれなさの中心です

紹介される予定の女性であるエリも困惑気味
男の方は照れているもののやや乗り気?
なにがいたたまれないって
男の友人とか親族がそろってエリの品定めをする所で
その閉じたコミュニティが
仲間を加えてやらんでもない
みたいな空気を感じさせて
当事者でも無いのに
いや
別にいいっす
とか言いたくなる落ち着かなさ

宿に到着のあたりで
そもそも3泊の予定なのに宿が1泊分しか取れてないとか
そもそもエリが1泊しか考えてないとか
計画との相違という不協和音が入り込んでますますもぞもぞします

結局きれいな林の別荘は1泊しか借りられないとのことで
放置されていたボロボロの浜辺の別荘を借りることになるわけですが
そこに宿泊を決定する経緯についても
別に全員一致ではないのに
旅のテンションで押し切ったりしていて
その陽気なはしゃぎっぷりの裏で不満メーターを増加させている人が
確実に存在するぞ
とか思うだけで
予告編でその後のトラブルを知る身には
いたたまれない気持ちになるわけです

この時点においても序盤にあった大きなお世話感は
ゆるむどころか加速していて
くっつける予定の二人を新婚とか言っちゃったりします

さらに
変更された計画に対するぼんやりした不満や
繰り返し押し寄せる波の音が与える不安なんかが
落ち着かない気持ちだけを増加させます

絶対ろくなことにならない

あからさまにけしかける大きなお世話圧力から
逃れるように移動するエリ
はしゃぐ周囲の友人達

エリは電話をしようとするものの
携帯電話が圏外だからということで
買い物ついでに
いよいよ例の二人でドライブ
アーマドが買い物している間にエリは電話
どうやら母親相手?
彼女は1泊で帰るつもりであることが明確に

電話の内容的には
実家にかかるエリ宛の電話は誰であっても
どこにいるかは言わずに
折り返すからと答えろと要請

この会話が後に謎を加速させるわけですが
知る由もない彼は彼女と会話しながらドライブ

離婚の理由を尋ねるエリに
ドイツ人妻が言ったという
最悪が続くよりは最後に最悪な思いをする方がマシ
とかなんとかいう言葉に
そりゃそうだ
と納得するエリ
なんのフォローもない男

別れた妻の台詞に完全同意されるとか
やっぱり居心地が悪いけど
イラン人男性は気にしないの?

さて
浜辺の別荘に戻ると
布団を持ってきてくれた管理人さんと遭遇

管理人さんは新婚さん用の布団だと強調
新婚さんを祝福する歌まで披露
完全なる善意
だけど困惑を隠さないエリ
そりゃそうだ

もちろん新婚ではないのに
周囲からそういう目で見られて
はやしたてられつづけるとかたまったもんじゃない

やーめーてー

夕食時も席を隣どうしにしようという
中学生みたいな仕掛けをかまし
塩を取りにエリが席をはずすとはやしたてる人たち

恥ずかしいから本当にやめて

塩を手に
戻れずにいるエリ
とかもう家に帰してあげて

テレビもないボロ別荘だということで
食事の後はジェスチャー大会
なにこの牧歌的な世界
しかもこのシーン長い

翌日になると浜辺でバレー
とかすげぇ勢いで遊ぶんだなイラン人

エリは途中で抜けて帰る準備をほのめかしますが
彼女を連れてきた女性(セピデー)が引き留めます
それも尋常じゃない情熱で
それをとがめる別の女性もいるものの
情熱の前に敗北
エリは困った顔のまま残ることになります

この展開も本当に嫌で嫌で
帰りたいって言ってんだから
帰してあげればいいのに
とか思うわけですが
引き留める彼女にも理由があるので困ります


子供達を見るように言われたエリが
子供に請われて凧を揚げるのですが
そのやけっぱちな明るい笑い声を
これまた不安になるくらい繰り返すんです
この監督は嫌がらせをよく心得ている!

やがて起きる事件
海辺で遊んでいた子供が溺れます

もともとそれなりの数のイラン人が
がやがやする場面が
生々しい作品ではありますが
非常事態に際して
みなが一致しつつもあたふたするここも
緊張感がすごいことになっています

ほとんど現場で目撃しているかってくらい

やがて波間の子供を発見救出するものの
エリがいないことに気づきます

子供をみているはずなのに

やがて買い物から戻ってきたセピデーが
エリが溺れたらしいという情報を聞いて
着衣のまま海に突入する焦りっぷり
とか
波のように繰り返し押し寄せる絶望展開に
クラクラします

ひどい話だ

警察の取調べを受けて初めて
エリのフルネームを誰も知らないという事も判明

なにそれー
どういうことー?

そういう人と親友をくっつけようとするわけ?
イランの男女交際ふしぎ

警察や地元ダイバー?たちはすでにエリは死亡している
という方向で納得している様子

ここで
予告編でみたエリの荷物が消えている
という展開がはいり
失踪したんじゃないか
という可能性が提示されているわけですが
その消えた荷物の謎は
本編ではすぐに解消されます

セピデーが隠していたそうです
帰りたがっていたエリが無断で帰らないように

予告編では荷物が消えている
ということで
彼女が帰っちゃった
という可能性を見せていて
それはすなわちエリが高い確率で生きている
という可能性があるわけで
現場の彼らたちも
一旦安堵の表情を浮かべるにもかかわらず
あっさり出てくるエリのカバンに
一気に気分が沈むのがまた生々しくて見てらんない

さあ
この安堵からの絶望で
ここまでため込んだ不満や不安が大爆発です

荒れる友人達
仲良しだったのにいろんなことで揉めだす集団

こわい

とりあえず
という事で
エリの母親に電話をしますが
素っ気ない態度で不審がる残された彼ら

そう
前にエリが電話した時に要請した対応です

でもその要請を誰も知らないので
不自然な違和感が残るばかり

エリの携帯がセピデーの鞄から出てきて
さらなる疑惑の種がまかれ育っていきます
夫婦間に亀裂まで

携帯の着信相手にかけると兄と名乗る人物

待ち合わせをして会いに行く
アーマドとセピデーですが
途中で
エリに兄はいない
兄じゃなくてエリの婚約者
とかまたとんでもない秘密がセピデーにより明らかになります

引き留めていたセピデーがノリノリだったのは
エリが婚約者との婚約を解消したがっていて
友人の男性とくっつけちゃえば
知り合い二人が幸せになる
という完全なる善意からだったことが判明

エリの母親への電話要請はこの婚約者対策である事も
推察できます

セピデーはエリのために全てを計画したわけですが
そこでいろんな事情を隠した事で
問題はより複雑化します
セピデーの面倒見が異様にいいという美徳は
フルネームも知らないエリの深刻な悩みまで回収しようとして
とんでもない事態に陥っています

ただでさえ
誰かが誰かを責めたり
比較的かかわりの薄い人が無責任な発言をしたり
子供は子供なので深刻さを理解せず
もうずっとそこにはいられない空気でいっぱいなのに
兄と自称した婚約者まで加わるとか
どこまで嫌な展開にしたいんだ

エリに婚約者がいると知った友人達は激怒
そりゃそうだ
婚約してる女性を友人に紹介するとか
いくらなんでも無責任
しかもそれに協力させられていたとか
たまったもんじゃない

結果
やってくる婚約者を
彼が自称する通り兄として接しようとか安易な選択をして
二人をくっつける旅だという事は内緒にしようと
子供達とまで口裏を合わせた挙句
結局の所ばれます
とんでもない嘘をついてみたら即バレる
とかまたいたたまれない状況に突入です
バレたと思った途端に逃げるとか慌てすぎ

このエリの婚約者男性もエリ一筋だったのに
どういう理由だかエリは煙たがっていたようで
エリの失踪に打ちひしがれているところに
結果的に彼女が彼を必要としていなかったことを
妙な形で知ることになるとか
とんでもないです

この辺の
婚約者の彼は実質エリに振られていた状態で
なおかつそれを初めて会う
エリのフルネームも言えない人間から聞く
という演出のどうしようもなさも秀逸

もうみんなぐったりです


一応エリがどうなったのか

という大きな問題が残っていて
結局彼女が無事だった
という展開ならまだ救われるのですが
どうやら
きっちり
死体で発見されます

その通知を心臓の悪い母に誰が知らせるか
についてのやりとりとかまで含めて
本当に最後まで手を抜かない嫌がらせ演出の連続で
ずっとけつをもぞもぞさせながら見てました

いたたまれない

非常事態発生時の行動を見れば
彼らが善意ある人たちであることは疑いようもないです
身を張る行動力もあります


そんな彼らでさえ
嫌なことは避けたいわけです
矛盾がどうとかそういうレベルの問題ではなくて

不幸な事故の横で
生きてる人たちは生活を続けなくてはいけない
という当たり前の不条理とか
ここまで連続でつめこまれるとか
最高でした

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コメント 1

うみうし

素晴らしい解説だった。まさにその通りの、見た後にモヤモヤが滞留するタイプの、変な緊迫感に満ち満ちた映画でした。
by うみうし (2017-08-18 21:28) 

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